理念

 日本ではがん患者さんの数が増加し続けており、年間100万人以上ががんに罹患する時代になりました。一方で、診療技術の進歩により5年生存率は63%程度と改善しています。がんを根治できなくても長期に生存できるようになったため、可能な限り長期間体を動かせる機能を維持し、就労の継続も含めた生活の質(QOL)を担保することが、重要視されるようになってきています。

 がん患者さんにおいて運動機能が低下する原因は様々でありますが、骨転移が悪化すると、疼痛、骨折や麻痺を生じて、その能力は著しく低下します。骨転移はがんの転移部位としては3番目に多く、年間10-15万人程度が新たに罹患していると推測されています。骨転移を適切に管理することは、運動機能を維持するために非常に重要ですが、現時点では骨転移の診断や治療法に関する医学教育はほとんど行われておらず、骨転移に対する標準的な治療方法は確立されているとは言えません。がん患者さんに、骨転移を代表とする運動器の問題があっても、生命予後を改善する治療が最優先になり、医療者側も患者側も運動器診療をおろそかにしてしまう傾向があるのではないでしょうか。しかし、運動機能を維持することは、生活の質改善のみならず治療の継続にもつながるため、生命予後が改善している現代において、その重要性を医療者や患者さん側にも啓発することは非常に重要であると考えます。

 私たちは、これまで整形外科医を中心とした医師で構成される任意団体として、骨転移の診断や治療方法、がん患者の運動器管理の重要性について、多くの医師やメディカルスタッフに啓発するため、年1回の研究会を開催し、がんや運動器に関連する学会でも情報発信を行ってきました。しかしながら、任意団体であるために社会的な信用が十分とは言えず、会員の募集、開催できる研究会の規模、各学会との交渉で不便がありました。そこで、団体運営の効率性向上とさらなる事業の拡大を目指し、私たちの活動に賛同してくれる誰もが参加できる団体である、特定非営利活動法人となることを決意しました。

 特定非営利活動法人になってからは、定期的な総会の実施や、法令等で定められた書類の作成・提出、一般市民への情報公開などを適切に行い、健全な法人運営を実現することで、社会的信用を得ることができると考えています。私たちは、骨転移の診断や治療方法、運動器管理の重要性の啓発事業、研究活動支援事業を通じて、がん診療の進歩および発展、がん患者さんの生活の質の向上に寄与し、人類の福祉に貢献することを目指します。職種や診療科を超えた多くの方々にご賛同をいただけたら幸いです。

申請に至るまでの経過
平成25年11月8日 東京骨転移IPWC(Inter Professional Work Conference)開催
平成28年1月23日 第3回東京骨転移フォーラム開催(IPWCより改名・以後毎年開催)
平成28年7月1日 任意団体 日本骨転移研究会発足
令和元年8月31日 関西骨転移フォーラム開催
令和2年1月18日 第7回東京骨転移フォーラム開催
令和2年9月4日  特定非営利活動法人日本骨転移研究会の設立総会開催